2014年8月1日金曜日

スラジュさん国賠 控訴審第一回期日が終わりました

7月30日15時半より、控訴審第一回期日が行われました。
今回は、原告側より、奥様からの意見陳述及び代理人からの控訴理由説明があり、その後、被告側(国側)からも控訴理由説明がありました。

原告側の控訴理由は
①地裁判決ではスラジュさんへの制圧行為のうち、スラジュさんの口にタオルを巻きつけた上で、前かがみの姿勢を強制したことは違法としたが、それ以外の行為は違法ではないとした点
②スラジュさんが違法な制圧講師を誘発したとして5割の過失相殺をした点
③慰謝料等の算定方法がガーナ基準とされている点
があげられました。

被告側の控訴理由は
①あくまでもスラジュさんの死因はスラジュさんにもともとあった心臓疾患による致死性不整脈であり、地裁判決ではそれを否定した点
②入管職員の行為は、国賠法上違法ではない点
があげられました。

奥様からの意見陳述では、裁判を続けることの苦しみ、様々な場面で思い出す夫スラジュさんとの思い出・喪失感などが語られました。傍聴者の中には奥様のお話に涙してる方もいらっしゃいました。

次回第2回期日は、10月15日(水)10時半より東京高裁825法廷となりました。
一回の期日で終わることも多い控訴審ですが、スラジュさんのこの事件は毎回多くの傍聴者も駆けつけ、裁判所側も注目されている事件と認識し、ある程度の時間をかけ審議していくようです。
引き続き、傍聴への協力、どうぞよろしくお願いいたします!

(写真は高裁に入るスラジュ弁護団の様子)


*以下、法廷内で実際述べられた代理人意見内容です(スラジュ弁護団児玉晃一弁護士陳述)この陳述の後、傍聴席から拍手がありました。
スラジュさんの存在そのものが過失だったとでもいいたいのでしょうか?
一審判決は、入管職員の制圧行為とスラジュさんの死亡との因果関係を認めた点で、大変画期的な判決でした。
しかし、一方で、スラジュさんが強制送還の命令に従うべきで、従わなかったのが違法行為を誘発したなどとして、50%もの過失相殺をしました。
スラジュさんが20年以上も連れ添った妻と一緒にいたいと願い、送還を拒んだのが、なぜ、せめられなくてはならないのでしょうか?
在留特別許可をめぐる裁判の一審でも勝訴したように、スラジュさんは本来、在留特別許可が認められても全くおかしくない人でした。
裁判で負けても、同種タイプのケースで、再審情願という手続により在留特別許可が認められる人は、珍しくありません。そんなスラジュさんが、家族と一緒に暮らすために送還を拒むのは当たり前です。
この点を捉えて過失がある、50%も減額するというのは、明らかにおかしいです。
この他にも、私たちは
*内規に反して手錠を足にかけたり、内規では使用が認められていない結束バンド、タオルを使ったのは違法ではないとしたこと
*逸失利益を全てガーナ基準としたこと
*遺族慰謝料が日本人の5分の1程度とされたこと
について、おかしいと思っています。
これらが、私たちが控訴をした理由の概要です。
もう一点、国の控訴理由についてお話しします。
国は、控訴審になってから、5つも医師など専門家の意見書を新たに出してきました。また、数多くの医学文献を翻訳して出してきています。
これらに掛かった経費は、一審で認められた賠償額500万円を越えるのではないかと思います。
そうまでして、国は何を守りたいのでしょうか?
昨年10月に、品川の東京入管で一人の男性が死亡する事件が起きました。昨日私は法務省に証拠保全に行き、死亡前の様子が映っているビデオを見てきました。
そこでは、嘔吐をし痙攣をしていたはずの男性の部屋に職員が行っているのに何も対処せず、緩慢な動作をしている様子が残っていました。救急隊員がきたのは、異変が起きてから約1時間後でした。
今年の3月には、牛久の、入国管理局でイラン人、カメルーン人が連続してなくなるという事件も起きました。
人を人として尊重する、そんな当たり前のことができていないから、こんなことがおきるんです。
入管は、スラジュさんの事件を何一つ教訓として生かせていないのです。
スラジュさんの事件は、先だってジュネーブで行われた国連の規約人権委員会でも、虐待によって死を引き起こした事件として懸念を表明されました。
人を人として尊重する、そういう、当たり前のことに入国管理局当局を導くような判決を高等裁判所でもして下さることを、信じています。
終わります。