2017年1月6日金曜日

スラジュさん国賠訴訟 弁護団声明文

昨年11月に出ましたスラジュさん国賠訴訟の最高裁判決を受けて、スラジュ弁護団の先生方が以下のように声明文を出されました。以下転載いたします。


国家賠償請求訴訟の結果のご報告
 

 国費送還中にスラジュさんが亡くなったことに対する国家賠償請求訴訟について、2016年2月1日付で最高裁判所に対して上告及び上告受理の申立てをしていましたが、同年11月9日付で最高裁判所第二小法廷より、上告棄却決定及び上告受理申立ての不受理決定を受け、同日付で原告側の敗訴が確定する結果となりました。決定理由としては、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」「本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。」といったもので、実質的な決定理由についての言及はありませんでした。

特段の抵抗が見られないスラジュさんを大勢で抱え上げ、法律上規定もされていない猿ぐつわ、足錠、結束バンド等の戒具まで用いた上で、前屈みの状態を強い、結果死亡という最悪の結果をもたらしたことに対して、裁判所は最終的に国の責任を認めませんでした 
激しい拘束・制圧が行われたまさにその最中に死亡に至ったという経緯があるにも関わらず、これがもっぱらスラジュさんの持病によるものという理不尽な判断が確定したこととなり、私たち弁護団一同はこの不正義の結果に強い憤りを感じます。また、スラジュさんが亡くなられてから約6年半、国家賠償請求訴訟提起から約5年が経過していたなかでの結果で、スラジュさん及びそのご遺族の無念に思いを致すと、筆舌に尽くせません。送還中に一人の人の命が失われるという大事を起こしておきながら、依然として入管行政においては被収容者や被送還者の諸々の人権に対して配慮した実務が行われているとは言い難い状況にあります。入管行政においては、人権侵害がなされぬよう慎重な配慮をするとともに、当事者の生命・身体・自由へ及ぼす影響の大きさを考慮して送還の全過程を録画する等その執行の適法性・妥当性について常に検証可能とするような仕組みを整えることが強く求められます。
これまで多大なるご支援をいただいた皆様方に、弁護団一同、感謝の意を表するとともに、今後も皆様方と協力しつつ、入管行政における人権侵害の根絶を目指していく所存です。
弁 護 団 一 同